「酷えパニック映画だったな」
「…お前がそれ言っちゃう?銀さんが何回反対したか知ってる?正解はね、俺も知らねーよー!」
「ヤバいヤバいって話題だったからさ。よく頑張ったよ銀時」
「うっ、銀時くん、辛かったのお、うっ、でもどうしても観たいってお前言うから、うっ、…じゃねえよ!寝れるかなマジで」
「添い寝してやるよ」
「それはいつでもして下さい。はー、今夜とか俺うなされてたらすぐ起こしてね、んで抱きしめてチュッチュしてね!」
「ウダウダ言う奴は要らないんだな」
「何が」
「奢られる酒」
「えっ何で?要る要る、超要る。ねえ、でも何で?」
「たまにはデートっぽくやろうかなと。たまに」
「やった!彼氏最高!」
晋助大好き!
「重い。何気に2人だけで外飲み、初めて?」
「重くねえし。俺ら?てかまさかお前?」
「な訳が…う、エホン」
あっ察し、って言うか気にするのが逆に腹立たしいぜ。
「ここ!ここにしよう!」
「もっと学生向けのがあるだろうが!」
「いいやここだね、ここしか無いね!」
「銀時…くそ野郎…」
「逆セクだ?酷え言い草だ」
「自分は言わないで俺のだけ聞き出そうとかとんだ淫蕩罪ですう」
「実際人数って話じゃないと思う」
「じゃあ教えてよ」
ひょんなことから言い合いの気配。
過去のことなんて聞かなきゃ良かった。好奇心も仇になる。
「相手を増やしても鍛錬にはならない気がすんだよ」
「つまり取っ替え引っ替えしてみたけど実にはならなかった、とかでしょ、当たりじゃねえか!」
「してないって。つうか声でかいぞ銀時」
「ほらあ、どうしたお前、お前こそな、何か口数多いぞ」
「…次は」
「メニューの渡し方雑じゃね?」
「寄越せ」
「ちょっ!まだ見てるからあ!かーえーしーてえー!」
「お客様、お決まりの頃お呼び下さいね」
わっ、今の笑顔かわいい。けっ。
「俺ビール。ひたすらビール。てかさ、良いだろ、腹割ろうよ」
「ならメニュー最初から要らねえだろうが!」
「他も飲もっかな―とか思ったけどやめた。ごめん」
「あ、すみませんお願いします。ビールとジンハイ」
「…いま可愛い方が来るの待ってたろ。まだ女の子いける?いや許す許す」
「ああ、全然いける。けど…」
「「けどセックスは微妙かも」」
「被せてくんな」
「いやそっち。ハモんな」
「立場的に俺の方が全然ありそうだけど。銀時のは意外」
「ちょっと、んん、そうだね。いや分かんないけど」
「自分で言うのもアレだけど、俺とやるのは面倒だろ。物理的に」
「いやまあ。申し訳。怒んないで、ごめんって」
「良いって。まあ、逆の立場だったら俺も多分そう思うから、何とも」
ちらっと流し目を寄越しながら喉仏を上下させて酒を飲み込むのが綺麗。狡い。
「お前と話すの、普通に好きよ」
「気持ち悪」
「失敬すぎるだろ!」
「くくっ」
「ねぇ、話戻すけどさ。前の子とやってた?よね。普通に」
「…」
照れるんだ。腹立つ。って思ってるのバレませんように。
「1番良かったなあって話してよ、エロいやつ」
「お、男子会っぽい」
食いついたー!?
お待たせしました、あっビール僕です、どうも、はい、うぃっす。
喉、撫でたい。冷えちゃったんじゃない。
「男子会…まあそうか。てかさあ何人?ほんとに」
「セクハラです」
「馬鹿じゃないの、ほんとに怒るよ!」
「何っつってもお前は笑うか馬鹿にするだろ。言うかよ」
「しないって、じゃあお前がグイグイ来てよ、銀時くんにもっと興味持ちなさいよ」
「お前の抱き心地、凄い好き」
「へっ?」
「案外柔らかい」
「そ、それはまさかDBと言いたい…?」
「髪の毛ぐるぐる遺伝子のデータベース的な」
「ちょっ、え、どっち?まじで、俺そんなん結構気にするから!!本当?!」
「気にしすぎだろ。心当たりがあるんだな。言ってみろ、1年でどんだけ増えたんだ?」
「なっ、いや無いわ!誘導尋問みたいになってっけど、実際無いわ!」
「なら良いじゃねえか。筋肉の質かな、柔らかいよな。良いんじゃねえか別に」
「えっ。ああ、そう、へえ」
「肌も。お前の肌綺麗だよな。背中に汗疹とか全く無いもんな」
…何ならこれまで触れた中で1番良い気が、とまでは口に出ない。
「あんま色々使わないからね」
「全身ちゃんと洗ってるんだよな?最初から思ってたんだよ、お前シャワー早すぎだろ」
「へぁっ?!あっ、洗ってるわ!」
「アタマ諦めてるっつってもシャンプーだってちゃんと使った方が良いぞ」
「失礼すぎる。ちゃんと嗅ぎなさいよ、ほら、ほら!同じ匂いさせてるでしょうが!」
「ん、…分かんねえな。日向みたいな匂いがする」
「ちょっ止めて恥ずかしい」
「嗅げっつうから」
「てかさぁ、もう行かない?ここでベタベタすんのもアレじゃん?」
「いやしてくんな」
「嗅いできたのお前だろが!」
「良いか、嗅げっつったの銀時だからな」
照れちゃうよね実際にそんな嗅がれるとね。
「待っ、えっと、デザートだけ頼んでいい?南瓜アイス…うーん」
「すみません、お会計」
「酷くね?!」
「コンビニでアイス買ってやるから。良い方、な」
朝。
「ん…銀…」
隣でもこもこ動く熱の塊。毛布の間から黒髪が覗く。
昨夜は互いに下着姿で引っ付いて眠った。触れ合う肌の温かさが心地好い季節になったもんだ。
しかしちょっと喉が痛い。
「…やべエアコン付けっぱ…むぁ、ポット…水…」
とうとう此奴も感染したか。
「ごめ、起こしちゃった?って寝てたー。…寝汗やばくね?」
ぺたぺた触れる手。喰いやすい部位を探してるんだろうか。
可哀想に、俺の肉は甘くないだろうな。
まだ人間の体温はあるんだな。
一体何処の世界にいるんだか。
お前と一緒にずっと幸せな夢の中ってんなら、ありだ。
「晋ちゃん、大丈夫?」
早く喰ってくれ。
「ね。って、泣いてね?」
銀時?!意識が戻ったのか。
早くこっちへ帰って来い。
「しん…」
良い調子だ。
「晋ちゃん!」
チャン?
「高杉、ねえ高杉!」
お前に名字久々に呼ばれたな…。
ガクッと高い所から落ちる感覚の後、跳ね起きた。
目の前には銀時の間抜け面。
心臓が煩い。
「う、ウケルー。…大丈夫?」
手が温かい。
絶対に映画の影響だ。
あんなに怖がっていた銀時を差し置き自分が悪夢とは。
しかし何だか。
銀時に置いていかれる寂しさ。
喰われると怯えながらも、心からの安堵。
絶望なのに甘かった。
腹を空かせて彷徨っただろうから、この身体中が溶けてアイスクリームにでもなってしまえば良いのに、と。
悪夢で知ったこと。
俺、銀時が好きなんだ。
朝ごはんめんどくせ。そうだ。
「朝ダッツする?」
「お前、夕べ冷凍庫ちゃんと入れたよな」
「当たり前じゃん。…寒っ、静かに布団開けてよ、もう」
ったく、くそ。馬鹿。
布団に戻って丸まると、晋助が居た場所に残る温もりですぐ幸せ。
うなされてんの可愛かったわあ。
はあ。シャワーしたらだらっと戻ってきてくんないかな。
そんで朝エッチしたいんだなあ。